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特集:犬アトピー性皮膚炎1IgE発見への道のり意味で、蜂毒によるショックや花粉症はこの範疇に属するものとされた。なお、Robert Rossel(ドイツ、1876-1956)一門による業績は1920年代のアレルギーの病理組織学を牽引するものであった(川喜田の感染論による)。アトピーについては、1923年にArthur Fernandez Cocca(キューバ→米国、1875-1959)とRobert Anderson Cooke(米国、1880-1960)が報告し、1925年にはHans Zinsser(米国、1878-1940)とJohn Howard Mueller(米国、1891-1954)が遅延型アレルギーを報告し、1933年にはMarionSulzberger(米国、1895-1983)がアトピー性皮膚炎を提唱した。1942年になるとKarl Landsteiner(オーストリア→米国、1868-1943)とMerrill Wallace Chase(米国、1905-2004)がリンパ球により伝達される遅延型反応の存在を明らかにしている。2. IgE発見の背景1)P-K反応1921年にOtto Carl Willy Prausnitz(ドイツ、1876-1963)は食物(魚)に特異体質とされるHeinz Kunstner(ドイツ、1897-1963)の血清中に、アレルゲンと反応してアレルギー性皮膚反応を起こす物質が存在することを発見した。いわゆるPrausnitzとKunstnerによるP-K反応の報告である。アレルゲンと反応する抗体様物質が患者血清中に存在するものと予想されたが、血清中には抗原特異的な抗体は証明されなかった。したがって、この不明の物質を単にレアギン(reagin:反応体、感作抗体、同種皮膚感作抗体)と呼称した。2)免疫グロブリン一方、生化学が発展したことで、血清中に存在する抗体について物質的性状が追究されるようになった。抗体は硫酸アンモニア塩析法によりグロブリン分画に含まれ、電気泳動法ではγグロブリン分画と関連していることが認められるようになった。そして、その分画は感染時増高し、治癒に伴い正常に復することが見られる事実も確認された。さらに、抗体グロブリンはγ分画のみならずβ分画にも存在する場合があることなどが明らかになった。そして、1959年にGerald Maurice Edelman(米国、1929-2014)や1962年にRodney Robert Porter(イギリス、1917-1985)が免疫グロブリンの基本構造を解明し、その物理化学的性状が追究され、分子構造やその機能が明らかにされた。相前後して、抗体については、国際的に免疫グロブリンと総称することになり、すなわち、抗体グロブリンはIgG、IgM、IgA、IgE、IgDと命名された。そして各種免疫グロブリンの産生に関与する遺伝子なども追究されることになる。しかし、1960年代の初めには、抗体活性を示すタンパクは免疫グロブリンと呼称されていたが、確認されていたものはIgG、IgMおよびIgAの3種類であった。3.石坂夫妻の足跡1)アレルギーへの挑戦1957年にアメリカ合衆国のカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)の免疫化学のDanHampton Campbell(米国、1907-1974)のもとに留学した石坂公成(日本、1925-)は、アレルギー反応は抗原と抗体が反応して形成される結合物が生物学的活性を示して起こるとの仮説を証明しようとして実験を行った。当時は、細胞に結合している抗体に抗原が反応することが刺激になってアレルギー反応が起こるというのが常識となっていたが、証明されていなかった。そこで先ず、試験管内で抗原と抗体の結合物を作成し、それをモルモットに注射して皮膚反応の発現の有無を検討した。その結果、抗原抗体結合物はモルモットにアレルギー性皮膚反応を起こすが、抗原が抗体1分子と結合した場合には活性がなく、抗体2分子が同一抗原に結合した時にのみ活性を示してアレルギー反応が出現することが判明した。そして、この活性の出現の有無は抗原の化学的性質というよりは、抗体それ自体の種類によって起こることも明かになった。これらの結果から、抗原抗体結合物がアレルギー反応を誘起する活性を示すのは、2個以上の抗体分子が抗原に結合するためであり、抗体が集合することが反応を誘発するためには必須の問題であると考えるに至った。1959年、石坂公成はジョンズ・ホプキンス大学に移り、正常のγグロブリンを化学的な方法で重合させた場合に抗原抗体結合物と同じ活性が誘導されることになるとの推測を確かめようとした。この方法によって抗原が抗体を重合させるために作用する事実を確かめることが出来ると考えて実験を行ったのである。その結果、重合させたγグロブリンが皮膚反応を惹起することを確認した。時を同じくして石坂照子(1926-)はジョンズ・ホプキンス大学のManfred Martin Mayer(米国、1916-1984)の研究室で実験し、重合したγグロブリンが抗原抗体結合物と同様に補体と結合することを証明した。これらのことから、補体が抗原抗体結合物に結合するのは、抗原によって抗体分子が重合するために誘導されることが解明された。vol.0 3