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VIP vol.0

デングウイルスによる疾患2014年8 ~ 10月、代々木公園を中心に160名もの患者(届出数。国内感染事例はそのうち108例)を出して、マスメディアを騒がせたデング熱。このデング熱とは軽症型の疾患名であり、重症型にはデング出血熱という表現と、WHOが推奨している重症デング熱という表現があります。この疾患の原因であるデングウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科のRNAウイルスで、1 ~ 4型の4つの血清型(DENV1、DENV2、DENV3、DENV4)があります。それぞれの血清型間の交差性がなく、各々が独立したウイルスであるともいえるそうです。このウイルスの標的細胞は単球・マクロファージや樹状細胞です。この疾患の興味深い免疫学とは、すでに一つの血清型のデングウイルスに感染してその血清型に対する抗体が出来ていた場合に、他の血清型が感染すると重症化することがあるというものです。DENV1(2014年に国内で発生したのはこの型)に感染・発症・回復したあとに他の血清型、例えばDENV2に「再感染」すると、重症化(疾患の顕在化および出血熱)することがあるのですが、これは、最初のウイルスに対する抗体が、2回目のウイルスの感染を助ける、いわゆる抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement:ADE) *という現象がおこり、大量のウイルス産生が引き起こされるためです。初感染の際に軽症ですんだ患者さんも、次に異なる血清型のデングウイルスに感染すると重症化する可能性があるということです。なお、初感染でも重症化することも報告されています。この他に免疫学的に重要なこととしては、デングウイルスの非構造蛋白質のひとつであるNS1の血清中の量が症状の強さに相関関係にあることや、血液中の補体系の異常活性化が関与しているということがあります。2014年に東京都に届出のあった108例の確定診断に用いられた検査は、NS1検査が51例(47.2%)、IgM検査が60例(55.6%)、PCR検査が94例(87.0%)、それぞれ行われていました。図1ネッタイシマカ。一般的にヤブカとも呼ばれる。英名はそのものずばりのDengue mosquito, yellow fever mosquito。都市部に多く生息しているが日本ではまれ。(写真提供国立感染症研究所昆虫医科学部)図2ヒトスジシマカ。一般的にヤブカとも呼ばれる。東北地方以南に生息し、夏季に活発に活動している。犬糸状虫も媒介する。(写真提供国立感染症研究所昆虫医科学部)18 vol.0