ブックタイトルVIP vol.0

ページ
15/28

このページは VIP vol.0 の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

VIP vol.0

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

VIP vol.0

特集:犬アトピー性皮膚炎1 IgEと犬アトピー性皮膚炎1アレルゲン(分子量1万Da以上)加水分解処理で認識部位を破壊(分子量1万Da未満)アミノ酸だけになると認識部位がないIgEの架橋が起こる肥満細胞の脱顆粒リンパ球が増殖する図6加水分解タンパクと肥満細胞脱顆粒、リンパ球増殖の関係。加水分解タンパクにIgEの反応は起こらないが、リンパ球の反応は起こる。アミノ酸のみになると両者とも反応しない。のミルクアレルギーの乳幼児でIgEが関与しないものに対して(すなわちⅣ型過敏症)、上述の加水分解ミルクを使用しないのはそのためである。イヌでもⅣ型過敏症の食物アレルギーはその症例が多いため9、加水分解タンパクの効能を安易に盲信してはならない。重要ワンポイント:加水分解タンパクの分子量ではIgEの架橋が起こらないため、そのタンパクに対するI型過敏症は起こらない。しかし、その分子量でもⅣ型過敏症はまだ起こる可能性があるため、食物アレルギーの療法食として万能でないことに注意する。IgEの血中半減期とIgE抗体の記憶IgEの血中半減期は他のクラスの抗体と比較して短い。教科書上ではヒトで2日であり10、イヌやネコではわかっていないが、ヒトを参考にすればイヌのIgE血中半減期は1、2日程度であろうと著者は考えている。そのような短い血中半減期であるから、血中のIgE値がある程度の高値で維持されるためには、IgE産生プラズマ細胞が常にIgEを産生していなければない。このIgE産生プラズマ細胞のIgE産生スピードはほぼ一定であると考えられており、また薬剤の影響も受けないため、投薬中でもIgE値は影響をうけない。よって、このことからIgE検査を実施するときには副腎皮質ステロイドホルモン剤などの休薬の必要性がないことが理解できる。IgE産生プラズマ細胞のIgE産生スピードがほぼ一定であることから、血中IgE値の上昇や低下は、IgE産生プラズマ細胞の増減を意味する。つまり、血中IgE値が上昇したらそれはIgE産生プラズマ細胞が体内で増えたということであり、その要因はアレルゲン暴露が起こったということである。すなわち、血中IgE値が上昇した患者はアレルゲン暴露を受けている、低下したらアレルゲン暴露が減ったと解釈することができる。ちなみに、著者の経験であるが、いったん上昇したIgE値は新しいIgE産生プラズマ細胞が追加されない限り(アレルゲン暴露がなくなれば)、徐々に低下し、一般的に犬においては、アレルゲン暴露が無くなってから3カ月頃から緩やかな低下傾向を示し始める(図7)。このことから犬では、骨髄のIgE産生細胞の寿命は最大で3カ月程度と推測しても良いだろう。このようにIgEの血中半減期は短いが、いったん血中IgE濃度が上昇し、IgEが肥満細胞上のIgE受容体に結合すると、IgEは長期間(おそらく数カ月間から1年ほど)にわたり肥満細胞に結合したままで存在することができる。この現象は獣医臨床において減感作療法が奏功した症例でよく経験する。減感作治療によって症状と血中IgEが消失したにも関わらず、その後数カ月かvol.0 13