ブックタイトルVIP vol.0

ページ
14/28

このページは VIP vol.0 の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

VIP vol.0

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

VIP vol.0

5)。即時相の反応は肥満細胞顆粒のヒスタミンによる反応であり、開始後一時間程度で治まってくるが、即時相が起こった部位にはその後リンパ球や好酸球が浸潤してくる。これら細胞は主にロイコトリエンを産生して即時相が起こった部位に新たに炎症を起こす。この炎症が遅発相である。遅発相は即時相よりも反応が強く、しかも長く持続するため、I型過敏症反応がいったん起こるとその治療には即時相を抑制する抗ヒスタミン剤だけでは効かないことに注意が必要である(注、抗ヒスタミン剤は即時相を予防的に抑えることでのみ効果を発揮する)。遅発相を抑えるためには、抗ロイコトリエン剤や副腎皮質ステロイドホルモン剤が欲しい。重要ワンポイント:抗ヒスタミン剤は即時相を予防的にブロックするのみである。高親和性IgE受容体(FcεRI)肥満細胞表面にはIgEが結合する受容体が発現しており、この受容体を介してIgEは肥満細胞に結合することができる(図4)。この受容体は、好塩基球を除いてその他の細胞には発現していないため、I型過敏症反応のほとんどはIgE -肥満細胞を介した反応となる(注、著者がイヌの好塩基球を分離した経験では、その数はヒトの100 ? 1000分の1以下しか存在せず、イヌにおけるI型過敏症反応はほぼすべて肥満細胞によるものと考えて良いだろう)。IgE受容体はIgEとの結合力の違いによって高親和性受容体(FcεRI)と低親和性受容体(FcεRII)に分類される。肥満細胞に特有の受容体は高親和性受容体であり、IgEと肥満細胞の結合は、高親和性受容体によるものと考えて良い。FcεRIは、3種類の分子が結合して形成されている。α鎖およびβ鎖、二つのγ鎖の3種類の分子が非共有結合で緩く会合する4量体で、細胞外に出ているα鎖とIgEの定常領域の中のCε3領域が結合する(図4)。重要ワンポイント:IgEは肥満細胞表面の高親和性IgE受容体と結合する。IgEとアレルゲンの結合肥満細胞上のFcεRIに結合したIgEがアレルゲンを捕えると肥満細胞に細胞内シグナルが入り、肥満細胞は脱顆粒する(図4)。しかし、この肥満細胞の脱顆粒はIgEがアレルゲンを単に捕えただけでは起こらない。この脱顆粒を起こすためには、1分子のアレルゲンに結合する肥満細胞上のIgEは少なくとも2分子以上が必要であることがわかっている。このように2分子のIgEが1分子のアレルゲンによってつながる現象を「架橋」と呼ぶ。したがって、1分子のIgEが1分子のアレルゲンを捕えただけでは脱顆粒は起こらない。そのため、肥満細胞の脱顆粒を起こすためには、体内に一つのアレルゲンに結合するIgEは2種類(2クローン以上)以上なければならない。もし、アレルゲンに結合するIgEがたった一種類だけだった場合、たとえ血中のIgE値が高値であっても肥満細胞上でアレルゲンによるIgEの架橋は起こらず、肥満細胞は脱顆粒することがないし、アレルギー反応も起きない。臨床現場で血中IgE値が高値であるにも関わらず、アレルギー症状が全くない場合に遭遇したら、血中のIgEはたった一種類しかないと考えることもできる。肥満細胞上で2分子のIgEが同時に1分子のアレルゲンと結合するためには、アレルゲンの大きさは必然的にある程度以上でなければならない。その分子量が1万ダルトンである。そのため、アレルゲンの分子量を1万ダルトン未満にすることで、アレルギーを起こさないようにする手法が取れる。それが加水分解タンパクである。加水分解によってアレルゲンタンパクは1万ダルトン未満にその分子量を低減することができるため、たとえそのタンパクに対するIgEが上昇していても、IgEの架橋が起こらずアレルギーも起こさない(図6)。この理論は製品に応用されておりヒトの牛乳アレルギーの乳幼児用の加水分解ミルクでは、その低分子タンパクすべてが分子量800ダルトン未満である。イヌやネコのアレルギー用療法食で加水分解タンパク食製品があるが、製品によってはその分子量は3000ダルトン未満であったり、1000ダルトン未満であったりするが、ヒトの加水分解ミルクと異なり、その低分子タンパクの含有割合は完全に100%ではないことに注意が必要である。製品ごとに情報が異なっており、開示されていない場合もあるため、正確な分子量とその含有割合については各メーカーに問い合わせておかなければならない。加水分解によってアレルゲン分子量の低減化は可能であるものの、ヘルパーT細胞はさらに小さい分子を認識するため(図6)、ヘルパーT細胞が関与するアレルギー(Ⅳ型過敏症)の場合には、加水分解タンパクはその効果が期待できないことに注意しなければならない。ヒト12 vol.0