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特集:犬アトピー性皮膚炎1 IgEと犬アトピー性皮膚炎1IgEはB細胞が特別なサイトカイン、すなわちインターロイキン‐4(IL-4)を浴びたときに産生される抗体であることは良く知られている。IL-4を産生するT細胞を2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)と呼ぶが、健常個体でTh2細胞が全く存在しないということではない。健常個体においてもTh2細胞は少ないながらも存在し、それが微量のIgE産生を誘導しているが、血中に検出されるほどのIgE量は産生されない。なぜなら、これらのIgE産生B細胞はすぐにアポトーシスを起こして死滅してしまうからである。このTh2細胞は濾胞型ヘルパーT細胞(follicular helper T-cell, Tfh)と呼ばれておりリンパ節から外に出ず、リンパ節の中でB細胞を刺激して抗体産生を促す。しかし、このTfhが記憶細胞になると(記憶Tfh)、リンパ節から血中に出ることができ、皮膚などの臓器やリンパ様組織、あるいは他のリンパ節に移動する。そこで記憶TfhがIL-4とIL-21の両方を産生することで、新たにB細胞を刺激する(図2)。IL-4とIL-21の両方の刺激をうけると、B細胞はIgE産生プラズマ細胞となり、大量のIgEを産生する4。したがって、アトピーの個体では、この二つのサイトカインを同時に産生する記憶Tfhによって、最終的に血中のIgEが十分に上昇してしまうと考えられるようになってきた5。したがって、アトピーの素因とは記憶Tfhが血中に出てしまうことともいうことができ、これまでのようなIL-4産生の素因だけではないことが想像できる。もちろん、イヌでこのような「アトピー」の新しいメカニズムは解析も証明もされていないが、ヒトやマウスのデータからイヌの臨床に合うような情報を外挿して考えると、これまでよくわからなかった現象が理解できるであろう。IgEの構造とその検査システム抗体の定常領域は重鎖のみで構成されるY字型の胴体部分に相当する。その構造は抗体のクラス毎に異なるため、抗体クラスの判別はここで行う。IgEの定常領域はCε1、Cε2、Cε3、Cε4の4つの部分から構成されている。とくにCε3は他の抗体クラスにはなく、IgEに特徴的であり(図3)、この部位で肥満細胞上のIgE受容体(Fcε受容体)に結合する(図4)。IgGなど他の抗体とIgEは、Cε3以外の部位(Cε1、Cε2、Cε4部分)はよく似たアミノ酸配列を持っているが、IgE以外の抗体はCε3構造部位を持たないため(図3)、これらはIgE受容体に結合することができない。ちなみに、IgE受容体がIgEのみに結合し、IgGに結合しない性質を利用することで、抗IgE抗体を用いずにIgE受容体の組換タンパク質をIgE検出に利用する検査システムがあり(Allercept、Heska社、米国)、抗IgE抗体がIgGを検出してしまうことで起こる偽陽性がないことから、とくに犬では新しいIgE検査を構築する際の比較検討に利用されている6。IgEの構造は動物種間でかなり異なり、その相同性はアミノ酸配列において40 ? 60%程度とそれほど高くはない。そのため、他の動物の抗IgE抗体が別の動物のIgEに結合する可能性は低く、動物種間で抗IgE抗体を共有してIgE検査システムを構築することが困難である。より精度の高いIgE検出系を求めるのであれば、基本的にはその動物種毎にIgE検査系を構築しなければならない。しかし、IgE受容体の結合部分のアミノ酸配列に限れば動物種間でその相同性が高いため、IgE受容体の組換タンパク質であれば動物種を超えてIgEを検出することができる。ヒトのIgE受容体の組換タンパクを用いて犬のIgEを測定できるのはそのためである7。V H1V L1V H1V L1Cε1C L1Cγ1C L1Cε2Cγ2Cε3Cγ3Cε4IgEIgG図3 IgEとIgGの比較。IgEに特徴的な部位はCε3部位である。そのほかの部位はIgEとIgGでよく似ている。Immunity, Vol.13, 375-385, September, 2000より引用・改変vol.0 9