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VIP vol.0

様に、その構造は定常領域と可変領域から成るY字型構造のタンパク質であり、分子量はどの動物種も押しなべておよそ200 kDaと抗体クラスの中では大きい(図1)。IgEも他のクラスの抗体同様に、そのY字型タンパク質は2つの重鎖と2つの軽鎖がジスルフィド結合することで左右対称となって構成される。そして、重鎖と軽鎖の先端が一緒になって可変領域を構成し、あらゆる抗原に対応できるようになっている。ここで我々は異物(抗原またはアレルゲン)が体内に侵入したとき、IgEよりも先に産生されるIgMやIgGと同じ可変領域構造をIgEが取ることをよく認識しておかなければならない(図1)。つまり、体内にIgEが存在するということは、IgEが認識する抗原に対してすでにIgMやIgGが体内に存在していることを意味する。このことは非常に重要であるが、臨床獣医師はあまり認識していないことが多い。一般にIgEとIgGの血清含有量はIgGの方が30万倍以上多いとされており、アレルゲンに対するIgEが血中に存在すれば、同じアレルゲンに反応するIgGは必ず血清中に存在し、しかもその量は少なくともIgEの数百倍から数千倍は多く産生されているはずである。よって、IgE検査を行う場合、このIgGがIgE検出の邪魔をしてしまうこと(IgGが干渉するという)を研究者は十分に認識すべきであり、臨床獣医師もIgE検査を評価する際には、どのようにしてこの厄介なIgGの干渉を回避しているのかを開発者に詳しく訊ねるべきであろう。重要ワンポイント:IgEが検出されればその他の抗体クラスもすでに体内に存在する。IgE検査ではその他のクラスの抗体を誤って検出しないことを担保しなければならない。IgE産生とアトピー素因アトピーと言う言葉はIgEを産生する異常を持っていることを指す。すなわち、何の症状を出していなくてもIgE産生があれば、アトピーと言って良い。しかし、健常な個体でIgEが全く産生されていない訳ではなく、検査で検出することが困難な非常に微量のIgEは実は産生されている。それでは、アトピーと健常個体の差はどこにあるのであろうか。<アトピー>リンパ節リンパ節IL-4Tfh微量IgEIL-21骨髄大量IgE記憶TfhTfhIL-4B細胞血中<健常>リンパ節リンパ節骨髄TfhIL-4微量IgEB細胞図2アトピーの犬では記憶濾胞型ヘルパーT細胞(記憶Tfh)が血中に出て他のリンパ節に移動し、そこで新たにB細胞を刺激する。記憶TfhはIL-4とIL-21を同時に産生するため、その影響を受けたB細胞は骨髄に移動してIgE産生プラズマ細胞となりIgEを大量に産生するようになる。一方、健常個体では、濾胞型ヘルパーT細胞は存在するものの、記憶TfhにならないためIL - 4しか産生せずB細胞のIgE産生を十分に刺激することがない。そのため、微量なIgEは健常個体でも産生されるが、血中で検出されるまでに至らない。8 vol.0